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MY SOMG

タツミさんから頂いたものに私が家康サイドで追いました
家康と左近は共鳴できる部分をたくさん持ってると思います




254.gif

土地が変わればこうも天気も人も違うのかと驚いた。あれから何日起っただろう。
めまぐるしい環境の変化をなんとか凌いだ。
離反後も慕ってくれる者達への配慮、ひとりものもいれば嫁や子、
家族のいる皆への生活の安泰、まずそれらが最優先事項だった。

見つけたのは小さな廃城。
暗く淀んだ空気、水はけの悪い土、城内は永く無人だったのだろう荒れぶりに、
手入れのされていない庭園は草も伸び切り、近くに住む動物達の寝ぐらに
なっているのか所々に糞が落ちていた。

前の城主は骨董が好きだったのかもしれない。
由緒あり気な品々の揃った部屋もあった。
それも昔の話で今は盗賊にでもあったかのような破壊のあとに見る影もない。
不思議と井戸が見当たらなかった。近くに川すらない。潰された瓦礫の山ならあちこちにあったが。


まず水をひかねばならないな


そんな事を自分で考えるのも面白かった。
ここを根城にするのを誰もが不安がった。
誰も知らない所の方がいいだろうとにこやかに笑えば
更に不安がる部下達を見ても家康の胸に一切の心配はなかった。
今の自分にぴったりだと思った。
誰も自分を知らない場所がよかった。
でなければ意味がないと思った。
自分の国を作るのに過去は要らない。
それよりもおのが国を作る興奮の方がずっと勝った。
人と人との絆。やり方は違えど豊臣とて同じ心があったのではないかと
天井にポッカリと開いた穴を見上げながら思った。
ここに1人いるから思うのかもしれない。
今となってはもうわからない話だ。


ワシにこんな野望があったとはなぁ…


鼠がいるのかばたばたとうるさい。
人が少ないから賑やかでいいなと思った。
1畳ばかり整えた寝床を背に家康は自分で自分に驚いていた。
嘆く気はさらさらないがたまにボンヤリとしてしまう。
考えている事がわかったのか忠勝が少し微笑んだ。
照れ隠しに今宵の月の美しさを語った。
天井のあちこちが雨風に腐れ、吹き抜けとなり天井の瓦が落ち、
そこから月の光が漏れていたのだ。
今夜は少し曇っている。穏やかな月の光が城内のあちこちを差した。
黙って聞いてる忠勝を尻目にひとりの男を思い出した。
今頃きっと般若のごとく怒り狂っているだろうその顔は見慣れたものだった。
容易に思い出せた。あれはよく怒る男だった。

いつだったか、飯を食わんと死ぬぞと軽く話しかけた。
虫の居どころが悪かったのか烈火の如く顔を釣り上げ、
たかだか飯を食わんくらいで死ぬならとっとと死ねと罵られた。
それでも自分の軽口を許す三成が家康は心地よかった。

三成は城内でたまに人を斬った。
敵でもなんでもない、味方だが、おのが心にあるものを少しでも侮辱すれば
三成は容易にそのいつも携える刀でふたつにした。目上だろうが目下だろうが関係がなかった。
多少のお咎めはあったとしても許されたのは太閤の寵愛を受けていたからだろう。
なにがあろうと動じない一国の主、そして父とも言うべき存在としての
威厳と誉れと愛情が三成には向けられていた。


何故ワシは切られなかったのだろう


三成への軽口とも暴言ともとれる言葉を吐いた事は数限りない。
その度にたまに反論し、たまに呆れ、たまに真っ直ぐと見つめ返してきた。


斬ればよかったのに


馬鹿げた考えにかぶりを振る。
あの左近という若者が頭にちらついた。
あれは切られないとすぐにわかった。
あの子供じみた約束を必ず守ってくれるだろう。
あの若者は必ずや三成を支え守ってくれるだろう。
未だに感傷が抜けない己がおかしかった。
ふと気づけば曇った空がいつの間にか晴れ、まん丸な月が姿を見せた。


ワシを照らすのはいつだってお前なんだな


見つめ返された目にはいつだって曇りは一点もなかった。
家康は遠くある月を手に入れるかのように空を掴んだ。

いつか会う時がくるだろう
いつか成さねばならない時がくるだろう


その時、彼は美しく輝き、咲き誇っているに違いないと家康は想った。


今宵の月のように


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